第19作 (昭和52年8月 公開)
男はつらいよ 寅次郎と殿様
旅先の寅さんは、伊予の国大洲で、わけありの若い女性・鞠子(真野響子)に親切にする。その後、大洲の城跡で浮世離れした老人と知り合うが、その老人こそ、世が世なら伊予の殿様・藤堂久宗(嵐寛壽郎)であった。饗応を受けた寅さんは、殿様の「次男の未亡人に一目会いたい」という願いを安請け合い。しばらくして殿様は、とらやに「寅次郎君はおりますか」とやってくるが…
サイレント映画時代から昭和二十年代にかけて時代劇のヒーロー“鞍馬天狗”を演じ続けた剣劇スター・嵐寛寿郎をゲストに迎え、渥美清と珍妙かつ絶妙なやりとりを繰り広げる。寅さんが大洲の旅館で出会う、美しきマドンナ鞠子に真野響子。殿様の侍従を演じた三木のり平のおかしさは、まさしくベテラン喜劇人ならではの味。夫に先立たれ、その想い出を胸に、懸命に働きながら、幸せを求めるヒロイン。殿様をめぐるエピソードの微笑ましさの中に、父と息子の嫁の、血が繋がらないがゆえの心の交流の美しさが繰り広げられていく。