男はつらいよ

男はつらいよ

50周年コンテンツ

「男はつらいよ」50周年プロジェクトに寄せて

『男はつらいよ』シリーズは今から半世紀前に誕生した。その頃日本経済は右肩上がりで一生懸命働けば報われる、今に豊かな時代が来る、という実感の中で日本人の心は充実していた。「寅さん」はそんな時代の日本の民衆が求めていたキャラクターだった。真の幸福とは何か、という考察を離れて物質的豊かさのみを目指す自分の姿の恥ずかしさを、笑い飛ばすことによって自ら慰め、安心する、それが寅さんシリーズの魅力だったのではないだろうか?

バブル崩壊を経て日本人の暮らしは低迷し不安な時代がおとずれる。1990年代後半からの「生きづらい時代」の始まり。格差社会の「貧困化」、市民生活のすみずみにまで渡っての窮屈な「管理化」。これがコンピューターの普及によって急速に進み、もはや寅さんが愛用した赤電話はこの国の風景から姿を消し、田舎の駅は無人化され、都市の駅の改札は自動化されて寅さんが敬愛してやまない生真面目な鉄道員の姿は見えなくなり、寅さんが店をひろげる地方都市の商店街はシャッター通り化してしまった。

今日、第1作のクラインクインから50年を経たこの時代、この低迷と不安の時代に観客が映画に求めるのは何か、その要求に、あの幸福だった70年代に生まれた寅さんはどう答えればいいのだろうか。それはきっと「なんとかなる、希望を捨てるな、生きていくんだ」という高い位置からの激励の言葉ではなく「ヤレヤレ、こうやって俺たちは日々人生を生きているのさ」という共感の笑い、苦笑、時として哄笑ではないだろうか。

今日のギシギシときしむ音がするような、悲鳴が聞えるような管理社会に寅さんの生きる余地はない。彼に必要なのは、この窮屈な世の中でなんとか生きていける「すき間」であろう。ヤレヤレと安心してもぐりこめるような、ゆったりとした「すき間」を発見してやる、あるいはムリヤリ作り出してやることが、寅さんという厄介な男の生存のために必要なのだと思う。

山田洋次
  • 第2作 『続 男はつらいよ』
    撮影風景

  • 第40作 『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』
    撮影風景

  • 第40作 『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』
    撮影風景

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